期間限定の婚約者
 私は新垣さんの背中を見送ってから、階段を降り始めた。

 新垣さんに助けてもらえた。でも……きっと、お見合いしたのを知られてしまった。

 それにこのホテルにいたのだって、きっとお義母さんと一緒に過ごすためだったのだろう。

 高藤さんと私を引き合わせるために、お義母さんがついてきた。

 さっさと私たちを部屋に入れると、お義母さんも新垣さんと……そういうことだよね。

 私は足を一度止めると、上を見る。

 さっきまで非常階段で煙草を吸っていた新垣さんの残像を脳裏に描いた。









「瑠衣さん、何を考えているの? 自分の父親の取引先の社長からの好意を受け取らずに逃げるなんて……。彼の仕事に響いたらどうするのよ」

 お義母さんが家に帰ってくるなり、私の部屋に乗り込んできた。
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