期間限定の婚約者
 私はキツイ着物から解放され、ワンピース姿になっていた。

 私は座っていた椅子から立ち上がると、「すみません」と謝った。

「でもお義母さんは、知ってますよね? 私の気持ちを。誰を好きかを。なのに……酷い」

「酷い? 侑は私と付き合っているのよ」

「わかっています。だからって他の人を私に当てがうみたいなことはしないでください」

「なら、このまま一生、侑に片想いして生きていくつもりかしら?」

「そういうわけでは」

「なら、私から奪うおつもり?」

 私は下を向いた。

 そういうわけじゃない。

 奪うとか。ずっと心に秘めて、一人で生きていくってわけじゃない。

 でも今は、新垣さんが好きなの。彼を好きな気持ちを大切にしちゃいけない?

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