酒神様
仕事の終わりにちょっと一杯。 サラリーマン前田庄司はお酒のうまい屋台による


これはもう習慣なのだ


クタクタになったスーツの上着を脱ぎながら木のベンチにこしかける。


この年になっても嫁なんていない。帰ってもくらい部屋が待っているだけだ


寂しさを抱えながら

「オヤジ、いつもの」

と頼む。 すると

「前田さん、いい加減良い人作ったら」

の余計なお世話の一言を放つ。焼き鳥をくわえながら寂しさやストレスをかき消してくれる魔法の液体の入ったコップをつかむ


まぁ酒なんだが。

「はぁーもう45だ。嫁なんてもう無理さね」


「最近は年の差婚?だのなんだのあるじゃねーの」


「俺は若い子にはついていけねーさ」

はぁ~……とため息をつきながら2本目の焼き鳥に手を伸ばす。


お酒なんかもう4杯目だった。仕方ないさね、嫁子供もいないおっさんはお酒がストレスの捌け口なんだ


「あいよ、320円のおつりだね」


「ごちそうさま~」

ひとり、1人、また一人とスーツの奴らが姿を消していく


あーぁ。
もうすぐあの寂しい家に帰らないといけないのか

「前田さん今日もラストまでいたねぇ。一人で帰れるか?」


「帰れるさ。じゃあおいとまするよ、ごちそうさま」


「気いつけてな」


ガタガタと店じまいをしているオヤジに背中で返事をしながらおぼつかない足で歩く。


俺はなんとなく自分の黄金ヘッドをペシペシ叩いた。


よし。かえるかぁ……


……!?いや、何かの見間違いさね
早く帰ろう……。
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