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思い出

　『櫻って前、北海道にいたんだっけ？』
　いきなりの詩季の質問に、少し困った。
　あっちにいた時はもちろん楽しいこともたくさんあった。でも以前の楽しい思い出も霞んでしまうくらい、辛かった。
　そんなこと、思い出したくもないって知ってるはずなのに……。
『そうだけど……』
『ごめん。思い出したくないよね。でも俺も一昨年くらいまで北海道に住んでたんだ。だから櫻が北海道って言ったとき、いろいろ思い出しちゃって』
「へぇ、詩季も北海道だったんだ」
　そういえばたまに詩季からのメールに、聞き覚えのある言葉があった。
『そういえば詩季のメールに、たまに方言があったね』
『うそ!?全然気づかなかった。でも櫻ってそういうのないよね』
『そりゃぁ、さすがに三年近くもこっちにいればね』
　でも詩季とメールするようになって、久しぶりに方言を聞くと、多少なりとも懐かしく感じた。