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 あたしは一歩引いた。
 あたしが何も言わないでいると、その男が先に口を開いた。
「誰って顔だね。まぁ知らなくて当然か。学年違ったし」
 ―学年……?
「……あたし……と……同じ……?」
 途切れ途切れに言った。
「そうだよ。でも俺は高校入る前からあんたのこと知ってるよ」
 あたしは怖くて、自分の部屋に向かって走り出した。
「彩女!」
 いきなり出た彩女の名前に足が止まった。
「……なんで?」
「なんで。ん―。じゃぁ、なんで俺が今ここにいると思う?」
「………」
「なんであんたがここに来ること、知ってると思う?」
 あたしは見て見ぬ振りをしていただけで、気づいていたんだ。
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