Mail
 「なんでわざわざ会いに来たりなんかしたんですか?」
「なんでって言われても……。でもあのメールを送る前に、櫻が言ってた幼なじみのこと思い出したんだ。あの子が考えてたことも知ってたから心配になって……」
 詩季は申し訳なさそうに言った。
「彩女が考えてたこと知ってたってどういうこと?」
「俺が教育実習で行ってたとき、たまたま聞いたんだ。でもその時は俺、櫻のことで頭いっぱいだったし、あの子が櫻の幼なじみだって知らなかったから……」
 この人はサラッと何を言ってんだか。
「そのことはもう大丈夫ですから。あと、あの頃先生が話聞いてくれただけであたしが助かったのは本当のことです。今更心配することでもないです」
 あたしはちょっと恥ずかしくなり、俯いたまま言った。
 チラッと顔を上げると詩季は嬉しそうに顔をほころばせて、ニヤニヤと笑っていた。
「気持ち悪い顔しないでください」
 あたしはその顔を見て、仕方なぁと思いながらも、少し嬉しかった。
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