クラスメイト
荒木とは中学からの付き合い。修が属するグループの一員ではあったが、二人きりで話す事は少なく、今のように素直に言いたい事を言い合える仲になったのは、高校で同じクラスになってからだ。
「長かったな、休み」
「まぁ、インフルエンザだからな」
「俺も中学の時なったわ
四十度近くまで熱あがって辛かった」
「辛いのは二三日だけだったけどな
有意義な休みになった」
「あっ、ずりぃ」
荒木が言うと修は満足そうに笑った。
「お前もインフルエンザになればいんだよ」
憂鬱で仕方ない学校だが、やはり友達との会話は楽しく、久々に登校して学校も悪くはないと思えた。ただ、こんな感情は三日以内に確実に消え失せるだろう。
荒木と話していると、修が登校してきた事に気付いたいつも一緒に行動しているメンバーが徐々に修の席へと集まる。
久々の再会で会話は弾み、時間はあっという間に進む。朝礼の時間になり、担任の鷹野がやって来ると、修の席に集まっていた生徒達は名残惜しそうにそれぞれの席へと散っていった。
その時、修の目はある一点に釘付けになる。
先程までは仲間達の影に隠れて見えなかった、一番左の列の前から二番目の席。
少し空いた窓から入り込む風に、あの黒髪が揺れていた。