泡沫眼角-ウタカタメカド-
知らない訳はない。


「…何を言ってる? お前ならもうわかっているんだろ?」


そう。
だって目の前にいるのは――


ゆっくり、振り向く相手。
可笑しそうに小刻みに肩が震えている。


あの人は間違いなく、――?

――違う。


「炯斗くん……じゃ、ない…?」

振り向いた彼を確認して、目を疑った。


振り向いて見た顔は、まるで別人。


見た目は炯斗くんなのに。

「何でっ――」


頭が真っ白になった。

あんまりな顔をしたのか、彼はクスリと笑った。


「らしくないな、コト。お前ならわかるはずだろう」


炯斗くんなのに、炯斗くんじゃない。

つまりそれは――


言乃はハッと顔を上げた。


「まさか…貴方はファントム……!?」


答えはない。
しかし、その笑みが全てを物語る。


「炯斗くんに何をしたんですか!」

「そう怖い顔をするなよ。借りてるだけだ」

「…炯斗くんから今すぐ出て行って下さい」


さっきと打って変わって、強い口調でまくし立てる。
ファントムは大仰に肩をすくめるばかり。


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