泡沫眼角-ウタカタメカド-

「でね……そう。うん!」

「……」


周りの視線もなんのその。
言乃も最新機器には弱いのか、熱心に説明を聞いている。


「はぁ…美味い。さすがは浅屋の羊羮」

奏も奏。
周りの部下は見ないふり聞かないふり。


「禅在さんとよくない関係ってのはわかりました。だから禅在さんが怪しいっていうことですね?」

「次はどこの和菓子屋を……って、あぁ。そういうことだ」

「……」


ハァ、全く…

なんだか緊張も取れてきた恵は、少し声を強めることにした。

「で! どうするんですか、これから?」

「あー、ゴホン! 俺たちとしては二人も殺られたんだ。落とし前つけなきゃならない」

「はい」

「その為に、指示をあおぎたいんだが……生憎、組長代理がいないんだ」

「代理?」


組長って奏さんじゃなかったの?


「数年前に親父が病気で死んでから、うちには正統な組長はいない。

当時俺はまだ若かったから候補には入らない。
そこで一人の男に頼んだんだが、そいつはどうしても辞退するっていうから、適任が見つかるまでの繋ぎとして代理を頼んだのさ」


実質、組長である。
が、その彼がいないとなると大きな動きは出来ない。

八年前の奇襲失敗は、彼らの中で大きなトラウマなのだ。



「あの、そのことなもんですが……」


< 112 / 267 >

この作品をシェア

pagetop