泡沫眼角-ウタカタメカド-
「こ、ことのん!」
恵は崩れ落ちる言乃を支えた。
恵の姿に安堵したのか、声が聞こえていたら
「恵ちゃぁん!!」
とでも叫んでいそうな様相で恵の胸に顔を埋めた。
言乃の背中をトントンとさすりながら、畳に残されたタブレット見る。
――間違いない。犯人は、一人しかいない。私にだってこれくらいわかる!
恵は真後ろに立った太い影をジロリと睨み上げた。
「な……なんだい…」
「トシオくん……ことのんを泣かせた罪は重いよ?」
トシオはヒッと青ざめ、一歩後退る。
少し落ち着いた――それでもまだ恥ずかしさに真っ赤な顔である――言乃を離し、恵はゆっくり立ち上がる。
「い、いや僕はね! こんなことになるなんて思ってなくってねだね…」
「だから?」
珍しく恵の言葉が刺々しい。
汗をだらだらと流して首を振るトシオ。
「違うんだ! 機械音声アプリで、タブレットに言葉を入力すれば読み上げてくれるんだよ! 優れものだろ?」
頑張りに目を輝かせて語らないで欲しい。
「あの変な最後は何だ?」
「奏さんまで! でもあれは…」
トシオは少しもじもじとうつむき加減に気持ち悪く笑った。
「今流行りの魔女ッ娘ロリたんッ☆が自動的に次のセリフを予想して言ってくれるってやつでね? この予測のプログラムが一番難しかったんだぁ、へへ」
「「ふざけんなっ!」」
「おぅふ!!」
恵と奏。
ダブルパンチでトシオはあえなく倒れた。