泡沫眼角-ウタカタメカド-
これから署で緊急捜査会議に行かねばならない。
狸と顔を合わせるのは癪だが、会議と言えばそうも言っていられない。
戻って見ると、署内は嵐だった。
「冬沢、高橋! よかった、ちょっと説明頼む!」
「んなこと本部で聞いて下さい!」
どうやら情報が錯綜しているらしいが。
「頼むよ!」
「これから本庁が現状を説明するための会議でしょうがっ!!」
朋恵に一蹴。
所轄としては、本庁に先回りをかけたい一心でも、間違えればミスだ。
「んなこともわからないのかって顔してますね」
「正直で何よりでしょう?」
にやり、笑って髪を掻き上げた朋恵。
荷物を置きに歩く背中を高橋は引きつった笑いで追った。
会議室。
号令がかかって、前の方で二人が立ち上がり、短いながらも捜査した成果を報告する。
「被害者は携帯していた免許証から吉野春日と特定。地下駐車場にて車のそばで発見されました」
「尚、持ち物から被害者は大跳真系比津次会の幹部であると見られます」