泡沫眼角-ウタカタメカド-
話の腰を折られた管理官はムスッとして、低く尋ねた。
「今の話からすると、被疑者は比津次会との関係が強く、比津次会の人間を殺害するには動機が見あたりません」
「そう急くな。確かに、動機は未だ不明――」
――やっぱり!
疑問のざわめきが部屋に広がる。
しかし、話はそれで終わりではなかった。
「しかし、被疑者・日奈山は2つの事件の前後で目撃されている」
「な、なんですって……」
一瞬にして部屋は静まりかえり、朋恵から色が失せた。
うすく、勝ち誇ったように管理官がせせら笑う。
「金子の事件では現場から走り去る姿を、吉野の事件では直前に言葉を交わしている姿が目撃されている。
そしてさらに! 日奈山は現在行方不明! 目下逃走中とみられる!」
おぉ、と鈍い感嘆が響く。
たった一晩で、よくここまで辿り着いたものだ。
拳を握りしめる朋恵の横で、高橋は舌を巻いた。
――現時点で、巻き返しは無理、か……
「先輩、これ以上は…」
大きく舌打ちをして、朋恵は乗り出した身を引いた。
管理官は満足そうに頷くと、締めにかかった。
「諸君らには、被疑者の動機、そして被疑者の行方を全力で追って欲しい! 以上!」
「「はっ!!」」