泡沫眼角-ウタカタメカド-
その後、補足を加える刑事たちの報告が続く。
が、二人はそれを全く聞く気になれなかった。
号令で会議が終わり、ぞくぞくと刑事が部屋から出ていく。
今回ばかりは、朋恵と高橋も足早に。
出口では父・狸翠が待ち構えていて、
「なぁ朋恵、情報交換しないか?」
「絶対嫌!」
一蹴。
立ち止まることなく通り過ぎる。
「……お父さん、悲しいぞ…」
項垂れた狸翠と隣で騒ぐ川井とには高橋が謝って取り繕った。
「最悪の事態になったわ…」
デスクに戻るなり、低く朋恵が言った。
「僕たちが日奈山くんに言った通りになってしまいましたね…」
「決め手になってるのは被害者といたっていう証言だけなのが不幸中の幸いかしら?」
「そうですね…」
高橋は手帳をペラペラとめくる。
朋恵は椅子に身を沈めて髪の毛をかき揚げた。
「どうしたらいいのかしら? こんなのあの子たちに言えないわよ」
「一度、状況を整理して見ませんか?」
相変わらず、びっしりと書き込まれた手帳を見易いように折り目をつけて。
高橋は真剣な顔を朋恵に向けた。