泡沫眼角-ウタカタメカド-
【彼と出会ったのはだいたい5年程前、私が15歳でした】


――それは、高校受験を控えていた秋頃の話――



受験ガイダンスで、学校が早く終わった。
家に帰るのもなんだか億劫で、近くの公園に立ち寄る。


同学年の子が数人、入り口でたむろしているのを横目に通り過ぎる。

――私は、あの中には入れない。


学区は同じ。年も同じ。家も近所。けれど、通っている学校は違う。

言乃は彼らから目を離した。


子供にとって、言葉のハンデとは思った以上に大きい。
言乃は、養護学級への通学を余儀なくされていた。

だから彼らは、知っているけれど、友達ではない。


気分が晴れない時は、叔父のいる神社へ行くか、公園でぼーっとする。


今日もそうしようかと思って、ベンチの前ではたと立ち止まった。
なんとベンチには“ペンキ塗りたて”の貼り紙。


「……」


残念に思いながら視線をベンチの端に向けて、ぱちくり。

人が、若い男の人が、平然と座って足を組んでいる。

幾度か瞬きをしても変化はない。
見間違いじゃ、ないようですね。

見なかったフリをして背を向けると、突然ベンチから声かかった。


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