泡沫眼角-ウタカタメカド-

言いなからガチャリ。
開くと出てくる冷たい空気。

「え、ほとんどないじゃんか」


希望が残っているはずのパンドラの匣もとい、冷蔵庫は炯斗の腹内と同様にガランとしていた。


虫も悲しげに音を高める。


流石、俺の気持ちをわかってるね!


「とか言ってる場合じゃなくて! 切実なんだって!」


俺の腹がね。

冷蔵庫を諦めて家のあちこちを探してみた――不思議と悪いという気はしなかった――が、収穫なし。


涙が出そうになったが我慢する。
だって俺、男の子だもん!


幸い、俺の財布は無事。たとえ知らない場所だったとしても、このご時世だ。
コンビニくらい近くにあるだろう。


飯を求めてアパートを出て少しして、交番があった。


――ラッキー!


こんな状態で知らない街をさまようのは御免。
なんというタイミングでなんという幸運。


炯斗は入り口に立って、意気揚々とおじさんの背中に声をかけた。


「すみません、ここから一番近いコンビニってどこにありますか?」

「はいはい、コンビニはね次の角を……」


これが紛れもなく不運だった。


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