泡沫眼角-ウタカタメカド-
少ない荷物をまとめる香田。
その中に拳銃やショットガンが混ざっているのを炯斗は見逃さなかった。
何をするつもりなのか、これから何が起こるのかは何一つとしてわからないが、今は従うしかないようだ。
身の為にも、お腹の為にも。
駐車場の車に乗り込んだところで香田はカロリーメイトを投げて寄越した。
「しばらくはこれでしのげ」
「アザっす」
「……どうやってここまで来た」
袋を開きかけて炯斗は香田を見る。
「どうやってって、どういう意味ッスか?」
「……」
沈黙。
しかし、香田自身もどう尋ねるべきか決めあぐねていた。
「……よくわかんねッス。とりあえず、必死に一人で道をずっと歩いてきたら…、気付いたら、香田さんちに」
「……そうか」
香田の言葉は短い。
どう意図した質問なのかわからない。
「助けてくれてありがとうございました」
これだけは、言っておかねば。
香田はハンドルを握ったまま表情を変えない。
「構わない。役回りの一つだ」