泡沫眼角-ウタカタメカド-
しばらく行くと車はファミリーレストランに停まった。
中に入って席につくと、チラとも見ずメニューを炯斗に差出し、
「好きなだけ頼め」
「えっ?」
ぐぅぅ〜〜……
どうしようかと悩む前に、虫が先に返事をした。
あれ? 俺こんなにがめつい奴だったっけなぁ…
「早く頼めよ」
「は、はい!」
変わらぬ表情で言う香田に ぶきっちょパパかおい! と内心突っ込みつつ、耳を真っ赤にしながらもメニューを手にとり、ハンバーグのプレートを頼む。
香田が手洗いにたった隙に彼の分――チョコレートパフェ――を頼んでおいた。
戻ってきた香田に、炯斗は切り出した。
「あの、香田さん。とりあえず教えて欲しいんスけど、今何が起きているんスか? 何で俺は警察に追っかけられたりしたんスか?」
「…そうか。何も知らない訳か?」
何もってなんだと思うが事実なので頷いておく。香田は持ち上げかけたお冷やをテーブルに戻した。
「ウチの人間が殺されていることは知ってるな?」
「はい。金子さんって言いましたっけ。俺は会ったことないッスけど」
「そこからは?」
炯斗は首を横に振った。
朋恵たちに話をしてから、記憶はすっぽりだ。
――気付けば、妙な街にいたんだ。