泡沫眼角-ウタカタメカド-
おまけに昨夜遅くに発見された死体。
この近くにシマを持つ暴力団のものと判明し、署では早速捜査本部が立ち上げられた。
ま、最初に通報を受け取った花形も可哀想だったわね…
頑張っても裏目に出たり、いらなかったりするどこか残念な刑事。
班は違うが一応、階級は下。
知り合いの探偵に連絡したみたいだけど、来なかったし。
どちらにせよ暴力団絡みじゃ、一探偵に任せられる事件じゃないから、早く気付けってもんだけど。
可哀想だとは思っても、評価も庇護もしない。
そこがまた、“氷の女”と呼ばれる所以でもある。
つまりは部下に厳しいのだ。
だからといって――
朋恵の思考が、幾度目かの核心に迫る。
「何っでアイツが来るのよ!」
「あたっ! 先輩、気を付けて下さいよ。事故りますって」
とばっちりが運転手に飛んだ。
しかし彼もこんなやりとりは慣れたもんで、短くため息をついた。