泡沫眼角-ウタカタメカド-

「さて、では本題に入ろう」

あくまで会話の主導権を握る狸に天城は眉をひそめたが、何も言わない。
蛇が睨んでも狸には効かないのか。

「あんたのとこの金子が殺害されたことは当然、知ってるな」

「ああ」


天城は不機嫌だ。

ぎこちない空気が充満している。

ああ…怖いよ…なんか視線が怖い…

メモを構えた手が今にも震えそうで、川井は他のことに脳の関心を向けようとしていた。

しかし背筋に刺さるいくつものナイフがそうさせまいと川井を応接用の椅子に縫い付けている。


視線が…視線が! いっぱい刺さる!


――視線? 何故だ?


前に座る人物は確かに人を圧迫するなにかを持ち合わせているが、こんなに四方八方から来るものではないはずだ。

思いきって――会話から完全に意識を外して――川井は振り返った。


――ひぃっ!


声をあげるところを手でパチンと抑えて堪えた。


先ほどまで自分たちを囲っていた男たち。
普段デスクワークなんてしないのか、はたまた偶然やることがないのか。

机に向かいながらも首だけは応接スペースに向けて、興味津々で全員がこちらを見て――否、たった今目が合った川井をにらんでいた。



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