泡沫眼角-ウタカタメカド-

* * *

狸翠は署に戻って、まず朋恵を探した。

「え、警部あのおん…じゃなかったあの刑事のとこに行くんですか?」

「朋恵な。ああそうか、呼び方に困るのか。…まあいいか」

「他人にとって名字が同じであることはとっても面倒はことなのでどうにかして欲しいんですが」

「どうにか頑張れ。お、いたいた。おーい、朋恵!」


ビクり、
なんともわかりやすいことに朋恵は大きく肩を跳ね上げる。
しかしすぐに作業を再開して聞こえないふり。
机に向かったままである。


「……相変わらずですね、あの女」

「……」


もはや暴言を吐いている川井。
しかし、横のなんとも寂しそうな空気を読み取るとハッと口を噤んだ。


「朋恵…、情報やるから日奈山のこと教えてくれないか?」

「……」

「……」


父と娘の、嫌がる視線とすがる視線。

本当なら立場は逆じゃありゃしないか?
思う川井は一人、目を背けたとか。



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