泡沫眼角-ウタカタメカド-
「そんなに言ってても変わりませんって…」
「だからってアイツにすることないわよ! 絶対に嫌がらせね!」
「そんな決めつけなくても……」
呆れる運転手の言葉に無視を決め込み、ストレートの髪をかき揚げる。
捜査本部は帳場と呼ばれ、警視庁から一つか二つの班が派遣される。
そのうちの一人が問題だったのだ。
朋恵にとって、最凶の人物――
「何言ってるのよ。狸ジジイが来るなんて、私への当て付け以外の何物でもない!」
私近々壊れるかも
そんなことを彼女に思わせる唯一の人物。
――狸ジジイ、もとい冬沢狸翠(フユサワ リスイ)。
ベテラン刑事にして、朋恵の実の父であった。