泡沫眼角-ウタカタメカド-
はぁ、
ため息をつきたいのを抑えつつ、高橋が取調室の扉を開けると二人のことはかまわず朋恵が高橋の買ってきたエクレアにかぶりつくところだった。
「先輩…」
上司二人(片方は親だとしても)を前におやつはさすがに…
「いいのよ別に。おやつの一部あげたから」
言われて見てみると川井と狸翠の手には一口チョコが一つずつ。
一部にしても一部すぎやしないかという苦情は川井の胸にしまっておいて、
「じゃあ話をはじめるか」
チョコを放り込み狸翠が口を開いた。
「これはお前たちにはいい情報かもしれないな。被疑者候補が増えた」
「!!」
「それは一体…?」
確かに朗報だ。
コーヒーを配り終えて高橋はすぐにメモを構えた。
「金子は黒蜜会の手の者だ。そのことに比津次も禅在も気づいていた。天城の話を聞く限りでは、どちらの組にも動機ありだ」
「なるほど…って、え!! あんた天城に話聞いてきたの!?」
コーヒーを吹き出しそうになる手前で、朋恵は叫んだ。
「ああ」
「ああって──ああ、もう!」
こともなげに答える狸に朋恵はコーヒーをテーブルにたたき付ける。