泡沫眼角-ウタカタメカド-
「わかってんの!? それで奴らが動いて犠牲が出たらどうするって!? 接触は慎重にって言ってたのどこの誰よ?」

「いやまぁ、俺なわけだが」

ピキリ! と鋭い音がしたかと思うと朋恵は狸翠のネクタイを引き上げた。

「おい!」

「先輩!」

二人が立ち上がる傍で朋恵は氷の視線で狸を睨みつける。

「責任者が自ら指針を破ってどうするのか・し・ら?」

「いややや…まあ、な。うん怖いぞ朋恵?」

「おい、お前そろそろ離せ!」

「あ?」


刹那、固まる川井。
氷は伊達ではない。
そう視線だけではない。

対抗できる人間がいなくなった今、高橋に強行という手段はなかった。

「先輩…、一旦落ち着きましょう?」

「そ、そうだ朋恵。今は話し合いだろ?」

いやいや警部は火に油ですから黙ってください!
そのとおりに朋恵はもう一度狸翠を一睨みするとネクタイを離す。

と、狸翠は大きく安堵の息を吐いて胸を撫で下ろした。



< 171 / 267 >

この作品をシェア

pagetop