泡沫眼角-ウタカタメカド-

「狸翠警部が禅在に乗り込んだことは今は置いておきましょう。
聞き出せたことは他にありませんか?」

「ああ、もう少しある」

「どうぞ」


川井はびっくりした顔で高橋を見つめた。
大人しそうな顔をしている癖に、逆らい難い雰囲気を醸し出している。

それは狸翠も同じなようで、迫力に押されながらゆっくりと口を開いた。

「天城の話では、金子は黒蜜会から送られた刺客だ」

「!」


二人の顔色が変わる。
人を驚かせるような話ばかりをしていれば、天城がニヤリとするのも頷けると狸翠はぼんやりと思った。

だが今は朋恵を刺激するようなことはしていられない。

怖いメガネくんもいることだし、な。

「さらに金の横領にまで金子は手を出していた。それを知って比津次会の方に送ったそうだ。
天城の口振りから察するに、間もなく比津次の方も気が付いたみたいだ」

「なるほど…となると、比津次側にも金子を殺害する動機があることになりますね」

高橋がメモを取りながら呟く。


「その日奈山が比津次の工作員だったら現状は変わらないッスがね」

「なんですって?」

「他には!」


高橋が声を荒げる。
朋恵と川井はふいと顔を背けた。


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