泡沫眼角-ウタカタメカド-

「ってえことは、だな」

会話の進行を聞いてか、ようやく狸翠が復活してきた。

「本部の捜査方針は間違ってるってのか?」

「知らないわよ」

「警部たちはお好きにしてください。それでも、僕たちは日奈山くんが犯人ではないという方向で捜査を進めます」

「二人でか?」

狸翠の発言に川井の体に大きく嫌な予感が這い上がった。

「け、警部? まさか…?」

「お前らでどうにもならないんだったらいつでも頼めよ」

「やっぱりぃ!? 警部それはちょっと」

「なんだよ、別にいいだろ」

ぶんぶん! と首を大きく振って川井は狸翠の腕にすがる。

「せめて許可をとってからやりましょうよ!」

「メンドくせえ」


ズンッ、と川井の脳天にこの六文字が直撃。
沈没していく川井をどかし、狸は力強い右手を差し出す。

「協力するぜ?」

しかし──

「ぜぇったい、いらない。」


娘の氷は厚かった。

そのとき、署内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。

『市内○○町、選挙事務所にて傷害事件発生! ただちに現場へ急行せよ! 繰り返す──』

「!?」


< 176 / 267 >

この作品をシェア

pagetop