泡沫眼角-ウタカタメカド-
「ってえことは、だな」
会話の進行を聞いてか、ようやく狸翠が復活してきた。
「本部の捜査方針は間違ってるってのか?」
「知らないわよ」
「警部たちはお好きにしてください。それでも、僕たちは日奈山くんが犯人ではないという方向で捜査を進めます」
「二人でか?」
狸翠の発言に川井の体に大きく嫌な予感が這い上がった。
「け、警部? まさか…?」
「お前らでどうにもならないんだったらいつでも頼めよ」
「やっぱりぃ!? 警部それはちょっと」
「なんだよ、別にいいだろ」
ぶんぶん! と首を大きく振って川井は狸翠の腕にすがる。
「せめて許可をとってからやりましょうよ!」
「メンドくせえ」
ズンッ、と川井の脳天にこの六文字が直撃。
沈没していく川井をどかし、狸は力強い右手を差し出す。
「協力するぜ?」
しかし──
「ぜぇったい、いらない。」
娘の氷は厚かった。
そのとき、署内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。
『市内○○町、選挙事務所にて傷害事件発生! ただちに現場へ急行せよ! 繰り返す──』
「!?」