泡沫眼角-ウタカタメカド-

画面には狸翠の番号。
二回ほど着信があったようだが……


「自分から掛けたくない…」

「ちょ、先輩!?」

「…嫌なのよ」

子供が間違って嫌いな食べ物を口に入れてしまった時のようなうえーとした表情。

「いや、そんな顔されても困りますよ…」


別の意味で途方にくれて、視線を泳がせる。
しかし、目が合った刑事たちは片っ端から逸らしていく。


高橋よ、一人で頑張れ!
というサイン。



ちょっと、酷いですよ!
涙目の叫びは、敢えて無視される。


触らぬ神に祟りなし。

それだけ冬沢親子の問題は厄介であるということだ。


「そうだ!」

手を叩く朋恵。
何を思いついたにしても今の高橋の状況をよくするものであるはずがない。

「どうしたんですか?」

高橋はげんなりと聞く。

「高橋が電話すればいいんじゃない!」

なんて素敵な考えだ! と目を輝かせる朋恵と対照的に、高橋の反応は

「あ、はい…そうですね…」


それしか言えなかった。


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