泡沫眼角-ウタカタメカド-

慰めにもならない無機質な発信音。

『おう、どうだった?』

「……はぁ、」

『な、なんだ開口一番に! 誰だ!』

いけない。
上司相手にため息をついてしまった。

しかし無理やりに気持ちを上げることも出来ず。


「高橋です。先輩はちょっと所用です」

『そ、そうか』


理由をでっち上げると狸翠の勢いもやや落ちる。
普通に考えて、野郎より娘の声のが聞きたいですよね。

思っても、拒否するのは朋恵の方なのだから仕方ない。


「こちらでは綾門の秘書の谷が銃でケガを負って病院に搬送されました」

『似たようなもんか。こっちではバイトとして来ていた若いのが暴行を受けて運ばれた』


携帯を肩と耳とで挟み、素早くメモをとる。

「事件自体は今までのとあまり関連なさそうですが、これで比津次の立場が微妙になりますね」

『ん? そっちには来てないのか?』

「はい?」

「高橋!」


反射的に振り返ったので、携帯が肩からポロリ。
となる前に慌ててキャッチして、足早に寄ってくる声の主を見た。

朋恵は、厳しい表情で一枚の紙を高橋の目の前に広げた。

「こ、これは……」

「ファックスで、たった今」


狸翠の方から先に送ったのだろう。

混乱で、そんなことしか思えなかった。







“ ファントム 三人目 四人目 ”


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