泡沫眼角-ウタカタメカド-
「……ホントに同一犯なのかしら?」
「「え?」」
警察署に戻って、再び取調室の一室を拝借。
互いの成果をもう一度報告しあったところで、朋恵が言った。
「それはどういうことですか?」
高橋が聞くと朋恵は腕を組み唸った。
「なんか……違和感があるのよね。今までの二件と比べるとあまりにも事件がずさんというか…。
前はまともな証拠一つ残さなかったのに」
「確かに。そうッスね。それに、メッセージも若干変わってます」
珍しく朋恵に同意した川井はファイルから資料を出した。
最初のメッセージのタブレット、第二の駐車場の血文字の二つが大きく写っている。
「これら二つは、数の後に“終わり”とありますが、今回はありません」
「被害者が死んでないからじゃないのか?」
狸翠の言葉に、ああ、と頷く三人。
「でもさ、カウントしていくくらいなら、どうして全員殺さないのかしら?」
「模倣犯、ですかね?」
ある事件が何回も続くと、それを真似して関係のない事件を起こす者がいる。
模倣犯とはそれをさして言う。
「しかし、カウントの人数まではマスコミに出していないはずだが…」
唸る狸翠。
「じゃあ、この事件を知っている者が真似してやったと?」
「いや、そうとはっきり言い切ることは出来んが…」
しばらく考えて、やはり狸翠は首を振った。
「ダメだ。なんとも言えん」
四人は重い息を吐き出した。
「なんかすっきりしないわね」
「足りないんだ。この事件の決定的な鍵が」
「犯人に辿り着く鍵ですか…」
事件の全容は、まだ多くが影の中。
四人はまだしばらく、その部屋で首を傾げていた。