泡沫眼角-ウタカタメカド-
「悪い、なんかしんみりさせちまったな」
「ううん、そんなことないよ」
【はい。思わぬ世界を知りました】
ご飯を食べ終えた言乃が久々に言葉を紡ぐ。
すると黒羽の表情が少し明るさが戻った。
「そ、そか…ならいいんだ」
「でも…認めてもらうってそんなに大事なことなの?」
「…ああ」
黒羽の言葉はしっかりしていた。
表情を引き締めて、真っ直ぐに。
男社会では実力が全て。
実績なしに認めてもらうことなど不可能。
その重要性は、女子には測りかねるものがある。
恵は、引き下がるしかなかった。
「…まぁ、さ。強いて言うなら兄貴たちの存在だよ」
「お兄さん?」
「そ。俺はこんな扱いを受けてる中で、兄貴たちはちゃんと立って歩いてる。でも……。
まあ、無駄に年が離れた兄弟なんているもんじゃねぇさ」
また黒羽は沈んでしまった。
どうしようと二人がおろおろしていると、また黒羽は口を開く。
「でも俺は大丈夫。兄貴たちに言えなくても、奏さんはわかってくれる。だから、俺も奏さんについていくんだ」
「そっか」
話す黒羽の姿は晴れやかだった。