泡沫眼角-ウタカタメカド-
【その通りです。
若かったために当時の黒羽くんには細かい話がなされていなかったようですが、おそらく、彼はその時何が起きたのか、既に知ってると思います】
「なんで?」
【正式な組の一員ではないとはいえ、黒羽くんのお兄さん方が泊まり込むほどのことです。
組全体に関わる何かだったのでしょう。そしてそれは、部外者に簡単に話すような話ではなかった】
「だから私たちには話してくれなかったんだ」
【おそらくの段階ですが…】
「でも、きっとそうだよ!」
恵は明るく言った。
「うん、大丈夫だよ! じゃあ次はどこから調べようか?」
【先ほどの続きから、つまり五年前からです】
「はーい」
また分厚いファイルを取りに、席を立つ。
歩きながら言乃は、ぼんやりと考えていた。
現在の黒羽くんに伝わっているということは、組の全員まで伝えなければならないほど、重大なことであったはず……
二人はまた、ファイルをめくり出す。
ならば、それは当時から比津次会に出入りしていた炯斗くんが知っていてもおかしくないはず。
しかし――
炯斗は今、ファントムだ。
探している本人に向かって聞くなど、バカらしい。
言乃が頭を振って考えを追い出そうとした時、恵が声を上げた。
「ことのん、これ見て!」