泡沫眼角-ウタカタメカド-
恵に呼ばれて見てみると、そこには記事の割には“暴力団 抗争か?”と大きめの見出しが載っていた。
「要約してみると、狭間 勲(ハザマ イサム)って人が三年前から行方不明なんだって。それでこの記事の一週間前に捜索願を出したみたい」
【それは何年前の記事ですか?】
「五年前だよ!」
言乃は大きく目を見開いた。
【恵ちゃん、それはつまり、勲さんが行方不明になったのは、八年前ということですか?】
恵は大きく頷いた。
そしてすぐに、あっと息を呑んだ。
「八年前ってことは、ヒツジ会さんで何かあった時じゃん!」
【そうです。ということは、それ以来行方がわからなくなっている人というのはこの勲さん、でしょうか?】
なるほど、と大きく首を振りながら恵は記事を追う。
「でも、なんで三年も経ってから捜索願を出したんだろう?」
【わかりません。何か、事情があったとしか思えませんね】
「うん…あ、ここ聞いて! 『組の本部になっているとされる狭間の名前であることから、相当の人物だと思われる』って書いてあるよ!」
【確かに、奏さんの名字も狭間でしたね】
「うん。この行方不明になった勇って人、結構若いみたい。行方不明当時23歳だって」
──23、歳…
言乃の脳内が、スッと冷えていく感覚が通る。
かつて会ったかの人は、確かに20代の人間だった。
一歩。
彼に、近づけた。