泡沫眼角-ウタカタメカド-

僅かな真実に熱くなる胸を押さえつけ、二人はまた新聞のファイルへ向かう。

恵が再び声を上げたのは、そう時間も経っていないかった。

「ことのん、もっかい! これ見て!」


覗き込むと、それは小さな小さな記事。
訃報の記事だ。


「狭間 治(ハザマ オサム)さんが78歳だって。あとはお通夜と告別式の場所と時間が書いてあるだけ。
これってもしかして、黒羽くんが言ってたやつかな?」

【それは勲さんの記事と同じ年の記事ですか?】

「うん、五年前のだよ。因みに勲さんのが春でこれが夏だよ」


言乃は大きく息を吐き出した。

年齢や組が混乱したという話からして治は組長であると推測出来る。
それからは比津次会には香田が組長代理として立っている。


――おそらく、勲さんが帰ることを期待してのことだったのでは…?


年齢を考えれば、治は勲と親子。

いつまで経っても帰らない息子を待つうちに体調を崩し、いつか地位を息子に渡すことを望んで息絶えた。



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