泡沫眼角-ウタカタメカド-
こうなると、気になるのは治と奏、奏と勲の関係だ。
未だなお、奏に長の位が与えられていないことを考えると…
──奏さんは、同姓でも別の家…?
比津次会の内部の関係は一体どうなっているのだろうか。
気になるところだが、今それを調べる手立てはない。
八年前の混乱は跡取りである勲の行方不明事件
五年前は組長である治の危篤
これらはまず、間違いなさそうだ。
言乃がファイルを閉じると、恵は顔を上げた。
【十分な収穫です。今日はこの辺りにしましょう】
「え、もういいの?」
【はい。今日の目的である、ファントムの正体についてわかりましたから】
「あれ? そうだっけ?」
言乃は、恵に大事なことを話していなかったことを思い出した。
【すみません。言い忘れていましたが、人は死後、すぐにこちらへ戻ってこれる訳ではないんです】
「そうなの?!」
大きな声を上げてしまって、恵は自分の口を押さえた。
言乃は携帯に文字を打ち込む。
【人は必ず、死ぬとあちらの世界に行きます。そして自分の意思で戻ってこられるようになるのは、早くても一ヶ月。人に、いや霊によって差はありますが、私が会ってきた霊たちは全てある程度時間が経ってからしか戻ってこられなかったそうです】
「戻ってきてない時は何を…?」
言乃は首を横に振った。
彼女自身、気になって何度も尋ねたが誰一人として答えてくれる者はなかった。