泡沫眼角-ウタカタメカド-
真夜中を過ぎた頃――といっても、街の夜は始まったばかり。
明るいネオンに照される通りとは対照的に、一角の路地裏は痛いほどの暗闇に包まれている。
その路地裏に、闇に溶け込むような黒いフードに身を包んだ人影と、派手なスーツの下に、これまた派手なアロハシャツの男と二人が佇む。
「んだよてめえ、いきなりこんなところに連れ込みやがって」
派手な男がいきり立って唾を吐く。
見かけからすれば、派手な男がカツアゲをしているように見えなくもないが、状況はどうやら違うようだ。
フードの男の唯一見えている口元が、僅かに歪む。
それを見て、派手な男はイライラと靴を踏み鳴らした。
――なんだよ、気味が悪い
怒鳴っても脅しても無反応で、何を考えているかわからない。
もっとも、表情が見えない以上は感情など測ることも出来ないのだが。
「おぉ、何か言ったらどうよ?」
「……」
「あ?」
何か呟いたようだが、聞こえない、と耳に手を当ててアピール。