泡沫眼角-ウタカタメカド-
* * *
朋恵と高橋は、最後の炯斗の目撃情報のあった地域に来ていた。
交番の巡査に話を聞き、逃走経路を追う。
住宅地を抜け細かい路地に入ったところで、足を止めた。
「ふむ…ここで見失ったのね」
「はい。そこであきらめました」
「まあ…一人じゃ賢明な判断ってとこね」
巡査はやや俯くように目を伏せる。
しかし、凶悪犯を相手とするならば犠牲者を出さない方がいい。
そういう意味で朋恵は言ったのだが、やはり目の前で逃がしたことは悔しいようだ。
──彼には、日奈山が犯人ではないかもってことは言わない方がいいかもね
それで三人は、巡査が目星をつけたという香田のアパートへ足を向ける。
「一人暮らしにちょうどいいくらいの小さなアパートなんですけどね、香田がここに住んでいることは間違いないです。写真でも、住民票でもそうです。ですが物静かな男らしく、何か問題を起こしたという話は聞かないですね」
「なるほど…」
高橋が急いでメモをとる間、朋恵は大家の元へ向かう。
「こんにちは」
「あら、こんにちは。何か?」
名乗って警察手帳を見せた上で、大家に香田のことを尋ねる。
すると大家のおばさんはぎゅっと眉を寄せた。