泡沫眼角-ウタカタメカド-
巡査をどうにか交番に帰らせて、朋恵は高橋を手招きする。
不思議そうに寄ってくる高橋は、朋恵の手にある鍵を見て顔色を変えた。
「先輩! それはマズイですよ!」
本来、逮捕されていない人間の家を捜査するには正式な令状が必要となる。
しかし朋恵は──
「バレなきゃいいのよ。大家も口を噤んでくれるわ」
「マダムの口約束なんてアテになりませんよ!」
「大丈夫よ。彼女サスペンス好きみたいだから全部終わったときに、貢献としてお名前が出るかもしれませんって言ったら、しっかり約束してくれたわよ」
高橋は頭を抱えた。
絶対に許されることじゃない。
しかし、行き詰った事件を進めるには必要なこと。
──そしてなにより、僕自身も捜査してみたいって思ってることが、一番問題だ…
許される事ではない。
これで味を占めてしまった時のことが怖いが──
「ああもう! わかりましたよ! でも絶対に洩らさないし洩れさせないでくださいね!」
「あんたこそ!」
二人はアパートを見上げた。