泡沫眼角-ウタカタメカド-
「足跡と指紋は残さないようにね」
「調べたものは元に戻す。何か見つけても持って帰らないでくださいね、令状ないんですから」
お互いに注意点を確認して。
鍵穴に挿し込み、二人はゴクリと唾を呑んだ。
軽い音がして、開いたことを伝えると朋恵は豪快に開けた。
「……」
「誰もいませんね」
「…ま、そうよね」
もう一度気持ちを落ち着けて二人は慎重に家の中に入る。
部屋の中は質素だがしっかりと生活感があり、片付いていた。
「ああいう人たちってガサツなイメージあるけど、そうでもないのね」
「さらっと失礼ですよ、先輩」
喋りながら、手近な引き出しや棚を見て回る。
「通帳や印鑑がありませんね…長期戦のつもりで出て行ったんでしょうか」
「あり得るわね、用心深い性格なようだから」