泡沫眼角-ウタカタメカド-
“もうこれで、オレが誰かわかったと思う。
今が大変な時期だとは知っている。しかし、だからこそ今がチャンスだ。
お袋の仇と……こんなことを書くと変かもしれないが、オレ自身のもだ。
奴等に、復讐を仕掛ける。
オレから連絡をする。
その時に答えを聞きたい。
考えておけ。”
「「………」」
しばらく黙ることしか出来なかった。
ポカンと見ている。
「……どういう意味よこれ」
「“復讐”とは、一体誰にでしょうか」
朋恵は髪の毛をかき揚げる。
不機嫌に、天井を仰いでため息をついた。
「差出人が誰だか知ったもんじゃないけど、香田が誰かに復讐するっていうなら、思い当たる節がなくもないわよ」
こんなところで狸に聞いた情報が役立つとは、激しくむかっ腹が立つが。
「…禅在組ですね」
危険察知能力の高い高橋は既にメモを開いていた。
そんな部下にありがたみを感じながら頷く。
「だとすれば、今比津次会が微妙な立場にあるのもわかる。けど…」
前半の事件と後半の傷害事件の違和感は拭えない。
証拠品を持ち出すことは出来ない今、携帯電話のカメラで手紙と人物データを撮影して、二人は香田の自宅を後にした。