泡沫眼角-ウタカタメカド-

* * *

オレの家はふつうじゃなかったらしい。
それには学校に入ってすぐに気が付いた。

家系はふつう。家業が変。

だから親父が変。
うちの家業のトップ。
だけど人間としてはふつうだし、かっこよくてオレが跡を継ぐんだと思うとわくわくしてた。

友達はオレを特別扱いなんてしなくて、学校はふつうに過ごした。
たぶん、厄介な部類だった。

母さんは優しくて、柔らかい人だった。


いろんなことが変化したのは、オレがもうすぐ10歳になろうという頃だった。


母さんが妊娠した。
皆して喜んで、オレは兄貴になるんだと胸が熱くなった。
実感はほとんどなかったけど、嬉しかったのを覚えてる。

でもその時期に隣の組との抗争が一気に悪化した。

夜が明けると誰かしらけがをしてて、オレは幼心におびえてたのを覚えてる。
それはきっと母さんも同じで、体調を崩した。


『すまないな…俺がついてていられればいいんだがそうもいかないんだ。…お前が、母さんとこれから産まれてくる弟が妹か…ちゃんと守ってやるんだぞ?』

『…うん!』


親父の言葉は、オレにずっしりとしたものと、あっついものを腹の底から湧き上がらせた。




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