泡沫眼角-ウタカタメカド-


* * *



“母さん”の話をしているときが一番嫌いだった。

皆みんな、その話を知ってるのに。

楽しそうなのに。

「こうだったのよ」とか「ああだったの」なんて優しく言われたって関係ない。

オレは知らない。

オレだけが知らない。

そういうとき、オレは一人なるべく早くその場から立ち去ろうとした。

この胸にはびこるモヤモヤした気分から、早く抜け出したかったから。




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