泡沫眼角-ウタカタメカド-
時が隔たる
* * *
真夜中近く。
どこかの駐車場に停まっている車の助手席。
突然、意識がはっきりとした。
起きたというより目を閉じていたかのような気分だ。
明確な目的をもって瞼を開けた炯斗はかばりと起きて隣の運転席に座る香田に迫った。
「香田さん…!」
「? 炯斗、なのか…」
眠っていた香田は、マラソンを走り終えたかのように汗を滴らせる炯斗を見て目を瞠った。
「どうした、お前そんな──」
「んなことはいいよ! 教えてくれよ香田さん。なんでこんなことしてるのか、何が目的なんだよ! 何であんたはファントムに協力してんだ!!」
香田は目を閉じて顔をそむけた。
炯斗はイライラと舌打ち。あの精神世界でのファントムの白骨。
あれを見て以来、悪い予感がしてならない。
いや、理由はあともう一つ…
──どちらにせよ、もう時間はねえはずだ。あいつにしても、俺のしても…
炯斗とて、体の違和感を感じないわけではない。
ファントムが自らの体に巣食うているのを自覚して以来、妙に体が重い。
理屈はわからずとも、危機感は徐々に迫ってきている。