泡沫眼角-ウタカタメカド-
「勲さんから連絡があったとき、生きていたのかと歓喜したよ。だが…」
香田は、今まであまり合わせようとしてこなかった視線を、しっかりと炯斗に向けた。
「ファントム殿として、お前として目の前に立たれたときはどう反応していいか、正直わからなかったよ…」
「ま、そうだろな…。俺だってビビるわ。でも、それでファントムが死んでるってはっきりしちまった訳だ」
皮肉を飛ばせば、香田はふっと笑った。
「そうだな。だが、お前だとわかったら、なんとなく安心はしたんだ」
「えっ?」
言葉の意味が分からなった。
ただ、お隣のガキに安心?
「昔からな、お前を見ているとまるで勲さんの幼い頃を見ているみたいだって古株たちの間で言われてたのさ」
「えええ? マジで?」
「ああ。特に吉野がよく言ってたな」
炯斗の脳裏に、思い出がよぎる。
しょっちゅう組に入れ、と誘ってきた吉野の面影。
『お前さ、似てるんだよ。しばらく前にどっかいっちまった奴に…』
──あの時のは、ファントムにってことだったのか…
と、いうことは…
「え。んじゃそんなに前から俺のとこにあいつはいたわけ!?」
気づいたか、と香田はクスと笑う。
「そのようだな。この証拠の手紙も、屋敷に隠してあったのを取り出したのはお前の体でだそうだ」
「なっ、なにぃぃぃ!!」
炯斗は頭を抱え叫ぶ。
「え、うっそマジいつからいんだよ! 家賃とらねえと割に合わねえよ!!」