泡沫眼角-ウタカタメカド-
進む足音
警察署・とある一室
刑事・川井は久々に回してみた首からのゴキゴキという音に顔をしかめた。
「いい音してんね、川井」
「おそらく、そういう警部だった相当だと思いますよ?」
伸びをしたり身体をほぐしながら、テレビに向かう狸翠を横目にする。
ソファに座るも、ひざに肘を置いた体勢でかれこれ二時間近く。
そんな姿勢を続けていれば肩も凝る。
「そうさなぁ…」
狸翠がためしに首を倒してみると案の定、ゴキッと響いた。
鳴り方が悪かったか、イテテと顔をゆがめる上司。
「はいはい、警部も少しは休んでくださいね。そうは言っても年は取るんですから」
「てめ、俺をジジイ扱いしたな!」
そんな上司の肩回りをすこしだけ揉んでやって川井は狸翠をテレビから遠ざける。
自分はまたテレビに向かい、デッキに新しいディスクを挿入した。
これは、今までの事件の付近にあった監視カメラの映像だ。
現場の周りに怪しい人物がいなかったか、もう一度洗い直している。
早送りで流していくものの、量は膨大だ。
第三、第四の事件から見ていって、第二。
夜通し見てようやく第一の事件に差し掛かったところだ。