泡沫眼角-ウタカタメカド-
警察が来た。
そのことを遅ればせながらも理解した谷はうろたえ始めた。
撃たれたという左腕を布団の奥に隠すようにしながら体を起こす。
それでもベッドの端に体を寄せてどうにか二人から距離を取ろうとしていた。
「まあ谷さん、いったん落ち着いて話しましょう」
「うう、うるさいッ! 私は何も悪くないし、出てけ!」
「そりゃできませんね」
喚き散らす谷の前に、怪しい狸の微笑み。
「間違えてしまったにしろ、私たちはあなたがこうして口を聞けるほど元気であることを知ってしまいましたからね。面会謝絶が嘘っぱちだとバレるのも時間の問題だ」
谷はぐっと黙り込む。
言い返したいが言える言葉がなく、口元をもごもごと動かすだけ。
「そうなれば、嘘をついたかってことも含め問題にされるでしょうね。それなりに大きな場で」
「そんなことになったら、綾門さんもあんたも失脚間違いなしですよ」
川井のだめ押し。谷の頭の中で様々な天秤が傾いているのが、二人にはよくわかった。
大きく唸って、脂汗を滲ませている。
「あんたが言うこと吐いちまったら、周りは変わるかもしれねえが、あんたには被害はないはすだ。そうだろ? 」
「し、しかし…」