泡沫眼角-ウタカタメカド-
スコップを二本探し出し、硬い地面を掘り進める。
その場所にしっかりと草が根を生やしていて、夢の中よりも大きな労力を必要としたが、今回は二人での作業。
思いのほか早く“白”が見えてきた。
先ほどの炯斗の言葉である程度を悟っていた香田。
彼はその土で褪せた白が見えた途端にスコップを取り落した。
ガラン…とたった音。
香田は、両腕をがたがたと震わせて今にも泣きだしそうな顔をしていた。
そして黙々と作業を進める炯斗によって露わになってゆくあの日の青年を、揺れる瞳で虚ろに見つめている。
「…わ、若…! すみません…あの時、俺がもっと、」
「香田さん、しっかりしてくれよ。そんなこと言っても、もう…」
炯斗は一度見ているから、わかっていたから今耐えられるだけだ。
鉄壁の心で覆い、目的の物を探す。
しかし抑えきれなくなりそうな気持ちを、香田に語り掛けて紛れさせる。
「あいつはもう死んでる。でもあんたも会っただろ、ちゃんと言葉を交わしたんだろ。
だったらこれはもう抜け殻なんだ。だから…あんたも割り切れ!」
ガサリ、炯斗の持つスコップが土を吐き出したところで、水平に横たえられたファントムの白骨の表面が露わになった。
肌はすっかりなくなり、服も所どころがボロボロ。かろうじてスーツだったであろうということがわかる程度。
頭には申し訳なさげに乗っかるトレードマークのカチューシャと、腐敗せずに残っていた髪の毛には金色がわずかに混ざっている。
そのすべてを黙視で確認したところで、香田が膝から崩れおちた。
今、香田の中には様々な思考が巡っているに違いない。
それは、いつかの日記帳を覗いてしまった時のような。
喪失感、後悔、救う手立てはなかったのかという疑問。
部外者であれ、気持ちを諭すことは出来る。
今は、彼をそっとしておくことにした──