泡沫眼角-ウタカタメカド-
「【気になることがあるので、噂の現場に行って来ます。多分1人で行きます】って、どんな伝えかた!?
しかも朝の5時に送るって! 失踪予告かと思ったじゃん!」
【ごめんなさい】
横目でじろり、睨まれ言乃はポカンとした。
「ホントに思ってる?」
【思ってますよ】
こんな大げさにとってくれるとは思っていませんでしたが…
「全くもう……」
プイと向いてしまう恵を見て、思わず笑みが零れる。
声を出せない言乃にとって、友人とは数少ないつながり。
幼い頃には、他人に声が聞こえていないという自覚もなくて、それが余計に人を遠ざけた。
しかし――
まさか、こんなに心配してくれるとは思っていませんでした。
それだけに、嬉しいです。恵ちゃん。
ただ、それを文字にするのは、口に出すことよりも照れ臭くて。
笑うだけで、いいと思える。