泡沫眼角-ウタカタメカド-

トシオ再来


「えっと……」









恵は突然入り込んだ隣の人物に首を向けた。

「誰?」

本当に、知らない。この人。
鼻息荒く、ことのんに迫る男。

「知らない人についていっちゃダメさ!」

「っていうかあなたが誰!?」

男は、初めて恵に気づいたような声を上げた。


本当に何なのこの人…


恵はひきつった顔で男の上から下までを見つめる。


脂肪が溜まって弛んだ肢体。
汗が蒸発して曇った眼鏡で目は見えない。
眼鏡のすぐ上、汗だくの額にはハチマキ――○○LOVE! と書いてあるみたいだけど汗で滲んで読めない――があり、さらに汗でペタリとした髪の毛が垂れている。
Tシャツにジーンズという目立たないはずの格好だが、なんともいえない存在感を醸し出している。


この人、どうみても――


【お久しぶりです、トシオさん】

「ことのんん!! 僕のこと覚えててくれたんだね!」

なんだろう、この疎外感。



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