泡沫眼角-ウタカタメカド-

迫られると暑苦しい熱気も共に。

「わ、わかった…」


宇佐目が離れて、恵は息を吐き出した。

それにしても、世の中はなんとも不思議すぎる。
年下なのに遥か上のオジサンみたいな人がいるなんて…


その時、恵の脳裏に衝撃が走った。

年下なのにオジサン

年下のオジサン

トシ下の……オジサン


「だからトシオ!」

「違う!」

【ちなみに、最初に言い出したのはケイトくんです】

「なっ!」

ガックリと恵は項垂れた。


よりによって、炯斗と一緒だなんて!


本人が聞いていたら、怒涛の抗議がくるだろうが、幸いなことにこの場に炯斗はいない。

「そんなに落ち込むことはないぞ!」

「……ふん、だ」

プイとすれば、肩に伸ばそうとしたトシオの手が途中で止まり、苦笑した。


【それより、トシオさんはなぜここに?】

「トシオ呼びは変わらないんだね…ことのん。

人に頼まれて駅前の和菓子屋でこれを買ってきたんだ」

掲げて見せる袋には、なかなかに有名な近くの和菓子屋のロゴ。

「その戻りにことのんに会えたんだ!」

【ようかんですね】

ことのん、スルースキル上がったなー…と呑気に恵。


< 33 / 267 >

この作品をシェア

pagetop