泡沫眼角-ウタカタメカド-
* * *
警察署
そこでは最初の捜査会議が行われ、捜査方針が言い渡された。
凛とした号令が響き、多くの刑事たちが行動を起こすべく椅子を引いて立ち去るところ。
その波に逆らわず隣の朋恵も立ち上がり、未だメモをしまわない高橋に怪訝な目を向けた。
「何してるの?」
「いや、ちょっと本部に報告したいことがありまして」
言葉を濁すと、案の定朋恵は不機嫌に眉を寄せた。
何で私に言わないのよ
という気持ちと
幹部のもとに行きたくない
という気持ちがありありと見てとれる。
「あー…あれでしたら、先輩は別に」
「いいわよ、行く!」
って言うと思いましたよ。
高橋は満足そうに頷いて立つ。
だんだんと先輩の乗せ方がわかってきた。
朋恵は父が何よりも嫌いで関わりたくないのが本心だが、彼の目の前から逃げるようなことはもっと嫌いなのだ。
若干怖いオーラを後ろに感じながら、前へ歩いていく。
幸い、目当ての人物はまだ席を立っていない。
「警部、ちょっと宜しいですか?」