泡沫眼角-ウタカタメカド-
「何だ?」
黒髪に白髪が混じり、うまい具合に灰色に見えている、明らかにベテランを感じさせる大柄な人物が顔を上げ――その瞬間朋恵はグイと視線を外した――た。
「巡査部長の高橋です。少しお耳にいれたいことがありまして」
「……言ってみろ」
高橋はメモを開く。
小さく咳払いをして話出した。
「えー…初動捜査の際に民間人から、野次馬の中に怪しい人物がいたとの通報が」
「はぁ? 民間人?」
目の前の警部ではなく、脇にいた刑事が声を上げた。
「あんたさ、わかってる? そんな情報ポンポンもらったってな、裏が取れてなければ意味がないの!」
「当たり前でしょ。そんなこと基本中の基本よ」
同意したのは、意外にも朋恵。
その刑事は彼女の言葉に気をよくして、口を開きかけて―
「そんな程度の低いことがわからないなんて刑事失格。
逆にいえば、それでも報告するってことはそれなりの自信があるってこと。それがわからないあなたの程度も、たかが知れてるわね」
先輩…ありがとうございます!
高橋が感動するそばでその刑事は口をガッポリ開けた。